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  • 年末年始の業務状況

    平素よりお世話になっております。

    当職は本日から冬季休業です。
    業務開始は新年1月7日(月曜日)午前10時からです。

    本年はアクセスが増えて、インターネット利用の広がりを感じる一年でした。
    業務の渋滞が解消されたら、来年度以降、このサイト上であらたな企画をしてみたいと思います。

    これからもよろしくお願いいたします。

  • 事業活動の取引相手についての問題点

    1 企業活動は,個人を相手にする場合と会社を相手にする場合があります。
     法的には,自然人法人という大きな区別があります。
     普段取引をしているときには,あまり意識されていないのですが,取引相手が,法的にどのような主体なのかを確認しておかないと,いざトラブル時に法的責任の所在が曖昧にされてしまうことがあるので,注意が必要です。

    2 個人の場合
     個人が,会社組織を作らないで,自分の屋号だけで商売をしている場合です。
     たとえば,マエダさんが,「前田商店」として小売店を経営している場合には,法的に表現すると,「前田商店 こと マエダ某」となります。当然,本名だけで取引をしてもかまわないのですが,実は,「前田商店」の部分(屋号)は,「商号」として保護されるケースがあります。ここではひとまず説明を省略します。
     このような個人との取引の場合には,どんなに大勢で仕事をしていても,最終的に責任追及できるのは「マエダ某」一人に対してです。
     個人的な出資者があっても,出資金の返還を約定していれば,マエダ某に対する債権者の一人として出資金を返してもらうことが出来ますので,出資者にまったく責任追及できないばかりか,かえって競合することになります。会社の株主が出資の範囲で責任を負う(倒産すれば株の価値がゼロになる)のとは違っています。
     そして,万一この「マエダ某」が亡くなったときには,金銭債権は各相続人の持分割合に応じた分割になってしまいます。たとえば,マエダ某さんに奥さんと子ども二人がいて相続された場合,400万円の債権が残っていたとしたら,奥さんには200万円、子どもには100万円づつを分割して請求するしかありません(連帯債務にはなりません)。相続人全員が相続放棄すれば,ゼロになります(正確には、何か遺産が残っていれば、相続財産管理人選任の申立をして、それを相手に回収します)。
     これを防ぐためには,個人との取引の場合には,その事業の後継者にも一定の保証債務を負担してもらうことが有効です。そのためには必ず保証契約書が必要です(口約束は無効とされています)。なお,根保証といって,一定の範囲で責任を負わせる場合には,必ず極度額(限度額)を決めなければならず,保証期間にも一定の制限があります。
     個人の特定のためには,住民票印鑑証明書の提出を求めて,運転免許証パスポートなどの顔写真のある公的証明書と照合することがほぼベストの方法です。社員証や健康保険証などは偽造が容易で,後日検証ができないので,個人特定には適していません。

    3 会社の場合
     会社との取引の場合には,相手が登記された法人なのかどうかを確認することが第一歩です。
     かつては多額の資本金を準備しないと株式会社が作れなかったのですが,現在は事実上資本金に意味がなく,登記手続き等の費用さえあれば,簡単に株式会社が作れます。会社にはそのほかにも持分会社というものもあり,有限会社もあります(但し,有限会社は現在新設出来ず、すでに設立済みの有限会社も法律上は株式会社と見なされています)。
     いずれにしろ,法務局に有効に登記がされていれば,法人ということになります。
     登記のある法人であれば,今度はその代表者が直接の取引相手になります。代表者は住所氏名が登記されているので,これを手がかりにして個人を特定します。
     本来,会社の業務は代表取締役が権限を持つのですが,社内の決済システムが整備されていて,事業部の部長や専務取締役が,対外的な契約の権限を任されているケースもあります。法的に厳密に言えば,それらの人が「支配人」として法的に会社の業務の一部を代理できる権限があるとして登記されていなければ,対外的な処理をすることができません。ただ,一般的には会社に帰属するものとして信頼して取引されているのが実情かも知れません。

    4 取引先管理上のチェック
     屋号だけで把握している個人は,営業所だけでなく,できる限り現実の住所,住民票の住所を情報として押さえておく必要があります。
     そうでないと,夜逃げをされたらいざというときに追跡しようがありません。
     会社については,登記されていることを確認するのは当然として,代表者の交代などにも注意を払う必要があります。ごく希に,登記があるけども実体がないペーパー会社を隠れ蓑として使い回す者もありますので,必ずしも登記事項証明書が万能ではありません。会社との取引の場合は,その会社そのものの資産のほかに,代表者個人の資産,収入なども把握しておいて,可能であれば保証契約書をとっておくことが望ましいといえます。

  • 公正証書とは

    1 公正証書とは
     「公正証書」という言葉をご存じでしょうか。
     これは,公証役場というところで,公証人が作成する文書です。「公証人」は法務局に所属する特殊な公務員です。公正証書を作ったりする手数料だけが収入であり,国からの給与は出ていません。これに似たような立場としては,裁判所に所属する「執行官(=不動産や動産の強制執行を実施する人)」があります。退官した裁判官や検察官などが公証人になっているケースが大半です。

     公正証書には,一般市民が作成する文書(「私証書」といいます)と違う特別の法的効力が認められる場合があります。その効力のうちもっとも強力なのは,「執行力」です。

    2 執行力とは
     「執行力」とは,強制執行ができる効力のことです。
     原則として,裁判所の判決があって初めて,不動産や預金,売掛金などの債務者の財産を差し押さえることができます。
     しかし,「公正証書」のなかに,「執行認諾文言(強制執行をされても差し支えない旨の文章」が入っていれば,裁判所に訴えを起こさなくてもすぐに強制執行が出来ます。一般に裁判手続は半年から1年くらいかかりますので,その時間を短縮できるのは大きなメリットです。
     ただ,公正証書をつくるためには,原則として当事者の両方が,公証役場に出頭しなければなりません。代理人を立てることもできますが,その場合には,公正証書にしようとする文書と割り印をした委任状に本人の実印を押捺し,印鑑証明を添付する必要があります。
     このようなことから,少なくとも相手方の協力が必要になるので,ある程度の信頼関係があるうちに作成しておくのがよいでしょう。相手の協力が得られない紛争継続局面では,公正証書を作ることが困難です。

    3 公正証書の実例
     よくあるケースは,「債務弁済公正証書」です。これは,一定の債務(貸金だったり,売掛金だったりします)がある場合に,その内容や返済方法,違約条件などを文書化するものです。執行認諾文言を付けて,いつでも強制執行できるようにします。
     他には,「協議離婚の公正証書」もあります。これは協議離婚に当たって,子どもの養育費や財産分与,慰謝料などの取り決めをした場合に,その内容でいつでも強制執行できるように作成します。
     ただし,注意しなければならないのは,強制執行できるのは「金銭の取り立て」だけなので,例えば「子どもの引き渡し」とか「分与財産(例えば自動車,不動産など)の引き渡し」とか「賃貸借解除後の建物明渡」などは,別途裁判を起こさなければ,公正証書だけでの執行はできません。
     賃貸借契約なども公正証書にすることがありますが,解約したのに退去しない場合でも,明渡の執行はできないことに注意する必要があります(金銭の取り立てしかできません)。賃貸借契約のトラブルに関して合意をする場合には、簡易裁判所の「訴え提起前の和解」を利用することが便利です。これなら当事者合意だけで、債務名義が作れますので、建物明渡の強制執行も可能です。

     ちなみに,公正証書を作成するためには,公証人に一定の手数料を支払う必要があります。さほど高額ではありません。やりたいことが決まっていれば、書き方の相談は無料でやってもらえるので、気軽に相談できます。

     しかし、もめ事の内容が複雑だったり、まだどうするか細部が決まっていないようなときには、公証役場では十分な対応は期待できませんので、先に弁護士へ相談してから内容を決めておいたほうが、公正証書作成までスムーズに進めます。