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  • 商号と商標の違い

    違いをまとめました

    商号 商標
    意味 会社の名前(1社に一つ) 商品やサービスの名前(1社が多数持つことも可)
    登録 法務局・登記 特許庁・登録
    根拠 会社法,商業登記法 商標法
    記号 なし(法務局の認める文字でないと登記不可) あり(記号や図形も登録可)
    期間 有効期限なし 10年ごと更新必要

     会社が大きくなり、需要者に周知されてくると,その名称そのものが一種の財産的価値を帯びてきます。ネームバリューとも言われます。
     最近では,コーポレイトアイデンティティ(CI)とか,ブランディングということで,広告業者や特許事務所などが,商号と商標の同時登録という広告戦略を勧めているようです。商号の登記・維持には登記費用とその後の変更登記費用がかかり,商標には出願登録時に約20万円くらい,更新時(10年ごと)に10万円くらいの費用がかかります。かといって,それだけの価値を生み出した時点で出願しようとしても,先に登録されてしまったりすることがあり,ブランディングの観点からは、著名にならないうちに先取りしておかなければなりません。
     商号や商標を不正に登記・登録・使用することは、民法や不正競争防止法により損害賠償請求の対象となります。不正使用の被害拡大を防止するための差止という方法もあります。
     ちなみに、「商標権」は知的財産権の一種です。このほか会社関連では、「意匠権」という言葉もよく出てきます。
     「意匠」は、物のデザインを保護する仕組で、商標と同じように特許庁の登録が必要です。製造企業では非常に重要な権利といえます。非製造企業では、サービスそのものの名称である「商標」のほか、独創的なサービスの仕組を一定のシステムと結びつけることで、「特許」を取得することが考えられますが、ありふれたアイデアはすでに登録されていることが多く、非常に多くの先行事例があるので、さらにその先を行く新しい発想が必要なため、なかなか狭き門といえます。

  • 離婚問題:養育費は子どもの権利とみるべきことについて の注意喚起

    注意喚起です。

    ネット情報を検索すると、「養育費の請求を、離婚協議書の包括的放棄・清算条項で阻止できる」という趣旨の情報が流布していますがかつて見られましたが、これは、明らかに間違いです(この記事を書いてから?ほぼなくなったようです 2014/10/20 追記)。

    財産分与慰謝料は、夫婦間の債権債務関係に基づくものなので、清算条項の範囲に含まれます。そういう意味では、包括清算条項は確かに有用です。しかし、養育費は子どもの権利(扶養請求ですが、未成熟子の扶養を養育というようです)なので、夫婦間の放棄合意(増減不可合意も)は処分権がないという意味で無効(民881)であり、夫婦間の合意としても公序良俗違反で無効になります(一定の当事者間効力を認めないわけではないけれども、子の福祉が最優先になるので、それに抵触する限りは公序良俗違反であるということ)。

    養育費は、子どもの必要を満たすために、夫婦の資力に応じて分担しあう支出ですので、夫婦の資力の変化や子どもの必要具合の変化に応じて、いつでも権利者・義務者双方から増額・減額の請求ができるものです(協議がつかなければ、家庭裁判所に「養育費増額・減額請求調停の申し立て」ができます)。

    夫婦間でとりあえず養育費内容を決めているのは、あくまでも子の福祉のための後見的配慮であるわけで、そういう意味で、個人的には、養育費については当事者の調整任せにしないで、もっと家庭裁判所の職権的な判断を強く出してもいいのではと思っていますけれども。。。

    協議離婚の公正証書に記載される包括放棄清算条項に、規定以上の養育費の請求放棄まで含まれているように当事者が理解していたとしたら、それは誤りですが、もしかすると公証人が、そこまで丁寧に意思確認してくれないかもしれませんので、上記のような誤情報に基づく一定数の錯誤が発生していて、そのうち紛争になる可能性はあります。

    繰り返しますが、養育費を包括放棄し、あるいは増減不可とする内容の離婚協議書の条項は、無効ですので、ご注意ください。

  • 商行為・商事契約のまとめ

    会社法は,わざわざ「事業行為」と「事業のための行為」を「商行為」だと決めています(会社法5条)。なぜ「商行為」という定義が必要なのでしょうか。
    それは,「商行為」であるかないかによって,「民法」「商法」のどちらが適用されるかが決まるからです。
    もともと,会社法は,平成18年改正までは「商法」の一部として規定されていました。いまでも「商法」という法律は残っていて,そこに「商行為」が規定されています(商法501条、502条)。
    商行為であるとき(商事)とないとき(民事)の、法律行為に関する違いは次の通りです。これらの規定は商行為全般に適用されます。

    商事 民事
    代理・顕名(本人のためにすることの表示) 不要(商法504条) 顕名必要(民法99条)
    委任 明示的委任外の行為も可(505条) 明示的委任範囲に限る(643条)
    委任による代理権 本人死亡により消滅しない(506条) 本人死亡で消滅する(653条)
    申し込み 直ちに承諾しないと申し込みは失効(507条) 民法には規定なし
    隔地者申し込み 相当期間内に承諾しないときは申し込み失効(508条) 承諾の通知を受けるのに相当な期間経過を要す(524条)
    諾否通知義務 通知義務あり・見なし承諾あり(509条) なし

    また,商事契約に関しては次のような違いがあります。

    商事 民事
    多数当事者の共同債務 当然に連帯債務(511条) 当然には連帯債務にならない(452条)
    委任の報酬 当然に相当額を請求できる(512条) 当然には報酬請求はできない
    貸金の利息 当然に商事法定利率(年6%)を請求できる 利息の取り決めをしなければ請求できない。
    流質処分 流質できる(515条) 流質できない(349条)
    債権の消滅時効 原則5年(522条) 原則10年(167条)

    要するに,一般民事よりも,素早く・簡単に物事をすませようというのが「商事」の基本的発想になっています。
    このほかにも当事者双方が商人である場合の売買については,次のような特別な取扱がされています。

    • 受領拒否・受領不能の場合に裁判所の許可なく競売が可能(商法524条)
    • 履行期日が重要な意味を持つ売買で,履行期が経過してから直ちに履行を請求しないときは解除とみなされる(商法525条)
    • 買主は通常の瑕疵は遅滞なく通知しなければ瑕疵担保・損害賠償責任を追求できない(商法526条)

    前記の商事法定利息(商法513条1項)は,両当事者にとって商行為である場合に限り適用されます。つまり,貸すほうは同じ貸金会社でも,商人に貸せば当然に商事法定利率(6%)で利息の請求ができますが,商人でない人に貸した場合は利息を約定しないと利息が取れません(利息を決めても利率を決めなければ5%です)。