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  • 弁護士に相談してもらえない事情

    顧問先企業からの相談が途絶えると,無事であるのはよいことではあるけれど,それでも,なにかないのかなと気になってしまう。気軽に相談してもらったらいいのですけど。。。

     日弁連の「中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書」というものがある。
     これは全国15450社を対象として,うち2割の約3214社の回答をもとに作成された資料である。
     調査結果の要旨によれば,
     弁護士利用経験=約50%
     法的問題が実際に起こった時の弁護士への相談率約44%
     弁護士へ相談しなかった理由
      ・相談企業のことを知らない
      ・専門知識がない
      ・日頃連絡を取っていない
      ・無料・安価な相談ができない
     ということらしく,弁護士には潜在ニーズの1/3程度しか相談が来ていないという実情のようだ。

     要するに,弁護士には日頃なじみがなくて,自社や業界のこともわかっていないうえ,行ったら高い料金を請求されるから,まずは日頃から付き合いのある税理士さんや社会保険労務士さんに相談してみよう・・・という流れになっているらしい。

     なんらかの法的手続きが必要になるという段階でようやく弁護士の出番になるというのが実情であるにしても,本当はもう少し早い段階で相談してもらったほうがいろいろと準備もできてよかったのにと思うことが多々ある。
     どうしたらもっとPRできるのだろう。

     弁護士に対して一般的に求められているのは,報酬のわかりやすさ,得意分野のわかりやすさ,フットワークの良さなどとされている。まずはこれに応えることが必要か。

     報酬のわかりやすさという点では,完全タイムチャージにしたらという考えがまず浮かぶ。しかし,高密度で集中的に作業をする1時間と,現地移動に要する1時間が同じチャージでいいのかという問題があり,つきつめていけば,事件ごとの標準クリティカルパスを設定して見積もりをするということになってしまい,結局は日弁連旧報酬基準のような内容にならざるを得ない。
     おそらく,弁護士報酬に対する指摘の本質は,「たったそれだけの時間・作業で,そんなに支払う必要があるのか」という疑問なのだろうと思う。
     弁護士としては,弁護士が関わらないことによって,その個人や企業が失う機会損失・時間損失や,弁護士と同じレベルの交渉・文書作成・訴訟スキルを自ら身につけるための投資費用などを考慮していただければ,けっして旧報酬基準が高すぎるとは思わないのだが,どうだろうか。
     特に,最近はネット上でいろいろな無料相談やQ&Aが出ているので,すくなくともそのレベルの知識は無料で入手できる。弁護士の相談料が高すぎると思われる方は,自分なりに調べることで,ある程度は費用を浮かすことができるし,レベルの低い弁護士へ相談したときに,そのレベルの低さに気が付けるというメリットもある。ただ,その労力を考えれば,最初から弁護士へ投げるほうが楽なのではないかと思うし,その楽な分だけ費用もかかるよということなのではないかと思う。

     得意分野についても,よく聞かれる問題だ。当職の場合は,サイトタイトルにもあるように,マンション管理,公害環境,医療過誤・交通事故・債務問題・過払い・民事再生・自己破産・相続・遺言・その他一般民事と標榜しているが,医師と違って,弁護士会や学会での専門認定があるわけではない。あくまでも,過去に経験があり,これからも継続的にメインの仕事としてやっていきたいというものを,自分勝手に掲げているだけである。
     依頼者側の意識として,「専門は民事ですか,刑事ですか」とか,「民事と刑事はどちらが得意ですか」というレベルで気になっているだけならば,よほど特殊な弁護士に当たらない限り,どんな弁護士でも,ほとんど違いはないといってよい。
     むしろ,得意分野を気にして尋ねるのであれば,自分の問題を具体的に説明して,「・・・という案件についての取り扱い経験はありますか?,経験事件数はいくつですか?」と聞いてもらったほうが,よほど正確にその弁護士を評価できるように思う。

     フットワーク・・・これは最近になって大分改善されたのではないだろうか。弁護士が増えたこともあって,これまで以上にフットワークの軽い弁護士が受ける時代になっているように思う。要は仕事が早いかどうか。
     残念ながら,滞留の案件がいくつかあって,当職自身には誇れるところがないので,今後の改善点の一つである。
     
     ・・・というわけで,相談はお気軽にどうぞ,という意識は常に持っているわけだが,いかんせん,個人事務所にはキャパシティの限界があり,せっかくこのサイトを見て連絡をくださる方がいても,対応ができない現状だ。
     すでに依頼いただいている方については,引き続き全力で対応し,いずれは,このサイトもひとつの窓口として開いていきたいと思う。

  • あけましておめでとうございます

    謹んで新年のおよろこびを申し上げます。

    昨年も多くの出会いがあり、おかげさまで新年を迎えることができました。

    依然として世の中に事件や事故が絶えることはありませんが、ご縁のある方々のために少しでもお役に立てればという一念で、今年も倦まず弛まず歩んでいきたいと思います。

    本年もよろしくお願いいたします。

  • 月の土地販売について雑感 補足

     以前から,月の土地問題は,閲覧回数の多い記事なのですが,イベントがらみのプレゼント需要に関連してか,最近再び上昇しているので,補足情報を入れておきます。

    1 基本の基
    1-1 所有 「所有」(大きくいえば財産権)制度は,地球の中でも国によっていろいろと制度が違っていて,動産にしろ不動産にしろ,だれが,どうやったらそれに関する権利を取得できるのか,また,二重所有権のトラブルはどのように解決するのか,という諸問題は,それぞれの国の民事法によって,細かい取り決めがされています。
     要するに,「所有」という概念は,そのような所有権を守るための法制度(ルール)のない所にはあり得ないわけです。
    1-2 領有 国がある一定の地域に対して,自国法の適用を主張して現実に占有した場合,それを他の国が認めてくれれば,「領土」となります。
     隣接国がそれに反対すれば「領土問題」が起きます。我が国でも過去のいろいろな経緯から,多くの領土問題が起きています(領海についてはさらに状況が複雑なので,ここでの記述は,領土の点に絞ります)。
     前記1の通り,「所有」のあり方は法制度によるので,日本国領土については,日本国法に従って,日本国民が所有できます。
     外国に関しては,その外国のそれぞれの法に従って,人や法人が所有できるかできないか決められます。
    1-3 まとめ・出発点
     ここまでに書いたことが基本です。
     それでは地球外の土地についてはどうなのか・・・というのが「月の土地問題」の発端になります。
     この点については,宇宙条約月協定(Agreement Governing the Activities of States on the Moon and Other Celestial Bodies)があり…という話が言われているわけで,基本的には宇宙条約の批准国(United Nations Office for Outer Space Affairsによると195カ国だそうで,アメリカ合衆国・日本も含まれています)に関しては,この条約が生きている限り,地球外天体に領有権を主張することはありません。
     いずれにしろ,宇宙条約下では,日本が月の領有権を主張しないので,日本国民としては,日本の法律による所有権としての月土地所有権を保護されることはないわけです。

    2 ネット上に見るいろいろな誤解
    2-1 法律の適用範囲について
     基本の基でも書きましたが,「所有権」は法律制度上の概念なので,一定のルールを考察する場合は,そのルールの適用範囲の要素(場所,人,時期・期間,対象物など)を確定したうえで,議論することが必要です。このことはまず押さえておきましょう。この原則が分かっていれば,この問題についての認識をもっと深めることができると思います。
    2-2 無主物先占について
     法律用語でいうと,無主物先占は日本国民法239条1項で,「日本国領土内」に適用される「動産」に関する規定です。
     つまり,月の土地問題(日本国領土外)でこの概念が出てくる余地はありません。ちなみに所有者がない不動産(海底が自然に隆起して出来た土地・・・そのほかの例ってどんなのありますかねえ・・・)は最初から国のものです(同2項)から,クルージング中に領海内で新しい島を発見して上陸しても,個人的な所有権は認められません。海面の埋立などで土地を作った場合については,公有水面埋立法というルールがあります。日本国外でも,当然に,それぞれの国がそれぞれの内容で所有権を規律する法律制度をもっているわけです。
     事実上の先占がやがて所有権へと変化していく例は,たとえばアメリカ合衆国の黎明期や帝国植民地などで歴史的に見られますが,このことと,法律学上の無主物先占とは議論の位置づけが違います。
    2-3 登記について
     登記をしなければ土地所有権を「対抗」できないとしているのは,「日本」の「不動産」に対する取扱に過ぎないので(民法177条),月の土地問題で、現状ではこの概念は出てきません。また,登記(登録)をしなければそもそも「所有権」を取得しないという制度をもつ国(ドイツなど)もあります。ちなみにアメリカ合衆国の場合は譲渡証書の登録が対抗要件です(アメリカは宇宙条約批准国なので,月の領有権を主張せず,当然ながら月面土地の譲渡証書を登録する制度も設けていません)。

    3 現状に対する見解
     ネット上で多くの方が述べられているように,現状販売されている「月の土地」は,おそらくそのまま土地所有権に変化していく可能性は限りなくゼロに近いものです。中国版の月面土地販売(月球村事件・2005年)では北京市の工商当局が,投資関係法違反で営業停止・罰金の処分をした例(裁判でも販売業者が敗訴)がありますが,日本語版の某社サイトにも,「月に鉱物資源があれば土地所有者の利益になる」趣旨の記述が見られます。もし準拠法が日本法になるとすれば,おそらく消費者契約法4条1項に抵触して契約取消を主張できることになるでしょう。
     単なるファンタジー世界の話として受け止めるのであれば,取消云々のヤボな話はナンセンスということになりますが,かえって,月面を切り売りするという話に「ファンタジー」感をもつような感性は,正直どうよと思います。小ぎれいな紙切れの対価が一私企業の利益としてむなしく消えていくだけならば,むしろそれと同額をWWFユニセフへ寄付するほうがよほどよいと思います。残念ながら,日本の宇宙開発(JAXA)へ直接寄付することは現状できないようです。