商標侵害品の輸入の処罰と通関業者の責任について

 いわゆる偽物ブランド品等は関税法69条の11(輸入してはならない貨物)のうち1項9号「…意匠権、商標権…を侵害する物品」に該当します。これに違反した場合は、関税法109条2項の罪(十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金・併科あり)になります。さらに、商標権を侵害した者に対しては、十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(商標法78条)との規定があり、侵害品の輸入も処罰対象になっています。

 つまり、ニセブランド品の輸入は、関税法違反・商標法違反の二つが重ねて適用されます。このように、一つの行為が複数の犯罪になり、重複して処罰される場合のことを「観念的競合(刑法54条1項前段)」と言います(参考判例 最高裁判所第一小法廷昭和58年9月29日判決(覚せい剤輸入案件)、名古屋高等裁判所刑事第1部平成18年5月30日判決(児童ポルノ輸出案件))。
 観念的競合の場合はどちらか重い方の罰が適用されます(併合罪なら重いほうの長期1.5倍が上限です)が、上記では同じ法定刑なので、10年以下の懲役・1000万円以下の罰金・併科ありとなります。なお、懲役と罰金は、どちらかを選択する規定が多いのですが、関税法・商標法違反では、懲役と罰金を併せて科することができます。これが「併科」です。

 また、貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければなりません(関税法67条)。輸入禁止・制限でない物品であっても、輸入許可を得ないで国内へ持ち込む行為は処罰されます(関税法111条1項 五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金・併科あり)。対象品が商標侵害品でなければ、輸入しても商標法違反になりませんが、関税法違反にはなります。故意に内容を偽った書類を提出して輸入した場合にも111条の罪になります。これは、輸入者本人が出した場合も、通関業者が出した場合も同じように処罰されます。以上の109条、111条の関税法違反は、未遂や予備まで処罰される点で、非常に重い種類の犯罪と言えます。

 なお、関税法109条も同111条も、侵害の「故意」がなければ罪になりません。つまり、申告内容に偽りがあることを認識して、それでもいいと考えて申告して輸入することが犯罪なのであって、荷主の申告内容の虚偽申請を見過ごしただけで通関業者が犯罪に問われることはありませんし、申告時点では当該荷物が客観的に輸入禁止・制限品であることを知りようもないのに、後になって、結果的に対象品だったことが分かったからと言って、通関業者が処罰されることもありません。

 次に、正犯と幇助犯の区別について説明します。
 犯罪組織の一味が役割分担をして、ニセブランド品を輸入したとします。このときは、たとえ単なる見張り役にすぎなくても、加担した全員が密輸犯として処罰されます。このことを共同正犯(刑法60条)といいます。一部分しか関与していなくても、その関与が犯罪全体の成功に寄与するからというのが処罰根拠です。
 犯罪組織に加わっていなくても、そのような組織であることを知りながら、これに協力したという人は、犯罪の一部を助けただけなので、協力者としての限度で処罰されます。これを従犯(幇助犯)といいます。幇助犯の法定刑は正犯の半分となっています。
 密輸入・無許可輸入のあっせん・媒介や貨物の運搬保管は、関税法112条に特別の処罰規定がありますが、これは一定の類型の幇助行為を処罰しやすくするための規定です。
 ここまでは、故意犯といい、犯罪を犯す意思をもって犯罪をする場合の規定です。

 このほか、関税法では、「過失犯」として、許可を得ないで輸入してしまった場合にも重大な過失があれば処罰できるという規定があります(116条)。過失犯は、罪を犯す意思はなかったけれども、結果的に間違って罪を犯してしまったという場合の規定です。関税法109条の密輸入罪には過失処罰がありません(116条は109条を引用していない)。もともと確定的な犯罪意思に基づく密輸入は過失がありえないのです。また、111条2項の通関業者の虚偽申告も過失処罰はありません。

 以上の犯罪は、個人としても法人としても処罰される可能性があります(両罰規定)。

 もし、通関業者が関税法109条や111条違反で処罰をうけると、たとえ罰金であっても通関業法6条4号の欠格事由にあたります(懲役であれば同条3号です)。欠格事由に該当すると、税関長は、通関業許可を取り消すことが出来ます(自動的に消えるわけではない)。
 関税法116条の過失犯で罰金になった場合は、通関業法上の欠格事由にはならないのですが、通関業法34条の「監督処分」の一環として、1年以内の業務停止や許可の取消まで処分可能になっていますので、許可が取り消される可能性があることは、欠格事由に該当した場合と同じです。
 通関士個人についても、業務停止(1年)や従事禁止(2年)などの処分可能性があります。

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