労働者代表

 前回は、労働時間の制限についていくつかの例外があることを説明し、時間外労働のことに触れました。
 そのなかで、いわゆる36協定を「労働者代表」との間で締結すると説明しました。労働者代表との間で締結する協定等は、時間外のほかにも、変形時労働時間制・フレックスタイム制・みなし労働時間制等の協定があります。

 問題は、労働者代表をどうやって決めているかという点です。
 最高裁トーコロ事件(写真印刷業)では、36協定を締結した際に、会社が労働者代表としていた者が、「労働者代表」ではないとして、36協定は無効であるから、時間外労働の命令は違法であり、その命令に背いたからといって解雇したのは無効であるとして争われました。

 ある調査によれば、実態として、従業員代表の選任方法は、社員会等の代表者が自動的に就任するものが約2割、事業主が指名するものが1割強ということだったそうですが、裁判例からすれば、そのような選任方法では、無効になる可能性が極めて高いといわざるを得ません。

 裁判例では、社員会は単なる親睦団体であって、たとえ選挙で会長が決まっていても、自動的に労働者代表ということにはならないとされたものがあります。

 もし従業員の過半数を組織する労働組合があれば、その代表をもって労働者代表としてもいいのですが、そのような労働組合がない場合には、まさに全従業員の過半数の意見を代表する者を、「民主的手続」で選任する必要があります。

 昨今、労働組合の組織率は低下しており、事業場や企業ごとの従業員による労組ではなく、地域ユニオンや管理職ユニオンのような一般労働者組織への加入者も増えてきていて、労働基準法が要求する意味での「労働者代表」を、簡易に確保できないのが現状です。

 しかし、現行法上では、民主的手続により選出された労働者代表を相手として各種の協定を締結しなければ、最終的に、企業側が痛い目に遭うことになってしまいますので、各種の協定に当たっては、いまいちど、「労働者代表」として適切な者との間で締結したといえるのかどうかを、しっかりと考える必要があるでしょう。

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