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労働者と労働組合

 以前「労働者とはなにか」の話をしましたが、労働基準法のほかに労働組合法でも労働者の定義があります。労働基準法は「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下『事業』という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」としていますが、労働組合法では、「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」となっていて、「使用される者」という部分が省かれています。
 これがどのような場面で問題になるかですが、例えば、裁判例でみられるのは、専属契約の楽団員の加盟する演奏者組合が、楽団経営会社に団体交渉を申し込んだ場合に、会社がこれを拒否してもよいかどうかという問題です。
 もし、労働基準法上の労働者による労働組合だけが団体交渉権を保障されるという考え方をとると、専属契約の楽団員が労基法上の労働者でなければ、楽団員の組合による団体交渉権は保護されないので、会社は団体交渉を拒否してもいいことになります。
 裁判所の判断は、雇用関係にない(労働基準法上では労働者でない)場合でも、会社から支給されている給料で生計を立てている以上は、団体交渉の権利があるというものでした。
 最近は雇用環境が厳しく、多くの労働者や個人事業者が、相互に競争関係にあるためか、大きな労働争議や厳しい労使交渉があるという話をあまり聞かなくなりました。しかし、団体交渉が低調になっている分、労働者個人や零細自営業者の不満が直接労働基準監督署や公正取引委員会等へ伝わりやすくなっていて、思わぬタイミングで、労基、公取、税務等の調査が入ったりすることも多くなってきていますので、経営者としては注意をしなければなりません。


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