新司法試験制度に対する見解

<司法試験制度概観>
 司法試験は,平成18年から,新司法試験になるが,平成23年までは,旧司法試験もそのまま併行実施される。平成23年の旧司法試験は前年の筆記試験免除者に対する口述試験だけなので,実質上は平成22年までが旧司法試験ということになる。また,併行期間中は,新旧いずれか一つの試験しか受けられないので,ダブルチャンスをねらうことはできない。
<旧司法試験>
 旧司法試験の合格者数は,平成18年が600人,平成19年が300人と予定されており,平成22年までにさらに縮小する可能性もある。
 旧司法試験で,一般に,「司法試験」といえば,二次試験のことを指しているが,大学等で教養科目履修済み者には免除される「一次試験」もあった。その概要は次の通りである。
 毎年1月に実施,受験資格の制限はなく,試験地は,全国6カ所(平成18年),試験科目は一般教育科目(人文科学関係,社会科学関係及び自然科学関係)の短答式・論文式,それと外国語科目(英語,フランス語,ドイツ語,ロシア語又は中国語のうちいずれか一つ)の組み合わせで,イメージとしては,公務員試験に近い,知識問題である。
 第二次試験が一般に司法試験と呼ばれているものである。
 まず,毎年5月に短答式(マークシート)で憲法・民法・刑法の試験があり,その合格者だけが同年7月の論文式試験を受けることができる(前年に短答式に合格していても,翌年に不合格であれば,その年の論文試験は受けられない)。科目は,憲法,民法,商法,刑法,民事訴訟法,刑事訴訟法である(平成18年 ちなみに私が受験した平成7年は訴訟法は選択式で,プラス法律選択科目もあり,私は刑事訴訟法・刑事政策を選択している)。そして,同年10月に,前年と当年の論文式試験合格者を対象として口述試験が実施され,最終合格者が11月に決まる(前年に論文式に合格していれば,翌年に不合格でも,その年の口述試験を受けられる)。
 合格者数は,司法制度改革審議会意見に従って,平成22年ころには3,000人程度とする方向で司法試験管理委員会において検討されており,平成14年からすでにその意見に沿って,旧司法試験合格者も増員されている。
 司法試験合格後は,1年4ヶ月の統一研修があり,その後法曹界へ進んでいくことになる。
<新司法試験>
 上記の通り,受験資格を制限しないところからスタートする旧司法試験と異なり,新司法試験では,複雑な受験資格制限がある(http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shinqa01-04.html 法務省サイト参照)。法科大学院を経由しない「予備試験」が平成23年から実施されるとのアナウンスがあるが,法務省の構想によれば,旧司法試験とほとんど同じ内容・レベルの試験を課すことを想定している模様である。また,旧司法試験には受験回数・期間制限がないが,新司法試験では,同一受験資格につき3回・5年以内での合格を要求している。
 受験制限の仕組みは,複雑である。たとえば法科大学院卒業者が予備試験にも合格していた場合には,どちらかを選択することになり,一度選択すると,5年間は最初の受験資格以外の受験資格では受験できないから,同時に複数の受験資格を備えても意味がない。また,法科大学院生が在学中に平成16年,17年の旧司法試験を両方受けていれば,平成18年の新司法試験が3回目となって,一発勝負をしなければならないことになる。さらに,別の受験資格で再受験するには,前の受験資格による最後の受験後,さらに2年間の待機期間が生じる。これをもとに,現在考えられる最悪のコースを想定すると,「頭は悪いが,一生懸命勉強して少しでも早く合格しようと,平成16年に法科大学院2年(法学既習者)コースに入学し,同年と翌年に2回の旧司法試験を受けたが合格できず,平成18年の新司法試験にも合格できなかったため,平成23年から再び参戦すべく,次の受験資格(予備試験)への合格を目指してまさしく「予備試験のための受験予備校」に通い,晴れて予備試験第一回目にして合格して受験資格を取得したが,平成28年までに3回の受験で新司法試験に合格することができず,大学法学部卒業後12年目にして司法試験を断念」という経過であろう。こうしてみると,平成23年から実施されるという「予備試験」の制度目的は,法科大学院の落ちこぼれ救済にあると思われるが,そうであるとすれば,非常に効率の悪い制度になっているように思われる。
 では,新司法試験の内容はどうか。
 試験制度は,短答式と論文式が,同時期に行われ,口述試験は行われない。短答式で一定数が足切りされ,論文の採点がされるのは,短答式で足切りされなかった者だけである。短答式科目は,公法・民事・刑事に分かれ,科目としては,憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法が対象である。論文式科目は,上記に加えて,倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際公法,国際私法のうち一科目を選択するものとなっている。
 司法試験合格後の修習については,当面現行制度が維持されるが,給費制(修習生全員に国家公務員扱いで給与を支給すること)の廃止などが提案されており,制度設計自体も大きく変化する可能性がある。

 この制度が我々既存の弁護士に与える影響については,また後日。

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