カテゴリー: 法令

  • お手柄警察官!

    【神奈川】県警薬物銃器対策課と横須賀署は7日、横須賀市荻野のとび職人、相馬雄二容疑者(28)を大麻取締法違反(所持)容疑で現行犯逮捕した。同市子安の山中の大麻草が台風9号で折れないか心配して見に行ったところを、張り込んでいた捜査員に逮捕された。相馬容疑者が大麻草を栽培したとみて同法違反(栽培)容疑でも追及する。(MSN:毎日新聞ニュース鈴木一生2007/9/8)

     まさにドンぴしゃりでした。台風の中、神奈川県警グッドジョブ!!。
     最近一部の警察官に不祥事があったので、こういう記事を見ると、警察も捨てたものじゃないと安心させられます。
     あとは、最新の捜査手法を駆使して、ヤミ金を根絶してほしいです。

     がんばってください>大阪府警の皆様 も
     

  • 刑務所・少年院は無菌室である

     以前担当した業務上過失致死事件の国選弁護刑事事件の被告人(加害者)が,受刑者となってある刑務所で服役している。この刑事事件は,放縦な生活をしていた受刑者が,不眠の影響下に自動車を運転して事故を起こし,同乗者らを重傷・死亡させたものだった。

     この受刑者から,刑務所での作業賞与金が溜まったので,被害者(故人)へ線香代を送りたいとの手紙が届いた。私は,遺族への取り次ぎを引き受け,後日受刑者から送られてきた1万円札1枚を,受刑者の手紙とともに被害者遺族へ送った。

     このようなことは滅多にあることではなく,大半の受刑者は裁判が終われば再び弁護人に接触して被害者に被害賠償をすることはない。有り体にいえば,「逃げてしまう」のである。

     被害者遺族からは「受刑者の気持ちは分かった。しかし,彼は刑務所という,世間から隔絶された無菌室にいて,反省する環境が十分に用意されている。だから,彼が出所してからさらに年月が経ってみないと,彼の本当の気持ちは分からない。もし,そのときにもまだ謝罪の気持ちがあったら,そのときは墓前へ参ってほしい。」との返事があった。

     最近,民事専門になってきて,刑事弁護事件をほとんど扱っていない。しかし,刑事事件をやっていると,ときどき,こんないいこともある。
     さだまさしの「償い」が私の頭の中でリフレインしている。

  • 管理費滞納者に理事の資格を認めないことは適法か?

    まず結論から。

    違法・適法の問題ではないので,集会や理事会で議論して自由に決めてください。その意味では,管理費滞納者に理事資格を認めないことは法律上可能です。

    <以下結論に至る考察>
     いわゆる分譲マンションオーナーの権利を区分所有権という。
     「建物の区分所有等に関する法律」が,区分所有権を規律している。
     区分所有者は共有部分や一棟の建物の管理のために,「管理費」や「修繕積立金」などを支払っている場合が多い。
     裁判例では,この管理費等の滞納が,同法第6条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」となることが認められているが,仮にそのような行為に該当するとしても,管理費滞納は「支払わない」という消極的行為なので,たとえば,共有部分を勝手に取り壊して増改築したりするような積極的行為とは若干性質が異なると考えられる。
     一般には,1~2回分の管理費の滞納だけで,直ちに「障害が著しい」とまでは言えないであろうから,競売請求(同法59条)が認められるのは比較的悪質な場合である(なお,管理費滞納を理由とする専有部分の使用禁止請求を認めなかった事例として,大阪高等裁判所平成14年5月16日判決平成13年(ネ)第3322号参照)。
     法律上,区分所有権に対する権利制限は57条以下の「義務違反者に対する措置」の限度でしか許されず,それ以外に,たとえば「管理費を滞納した場合には,電気・ガス・水道の供給を滞納解消まで一時停止する」などの措置を総会決議や管理規約で定めることはできない。法30条が「法律に定めるもののほか,規約で定めることができる」としているのは,そのような意味であると反対解釈されている。

     余談だが,弁護士会の機関誌に「自由と正義」という月刊誌があり,その末尾ページに懲戒の公告欄(弁護士の人気ナンバーワン記事?)がある。そこで,懲戒事案として,マンションの管理規約中の「管理費滞納の場合は,共有部分の使用を禁止し,電気・ガス等のライフラインを切断できる」との条項に基づいて,うかつにも電気・ガスの配線切断に立ちあってしまった弁護士の(かわいそうな?)事案が掲載されていた。みんなで決めたから…とか管理規約に書いてあるから…といって,そのまま鵜呑みにしてはならないという教訓である。

     では,管理費滞納者に対して,管理者あるいは管理組合理事長やその一部門の役員の資格を認めないとする管理規約や理事会内部での申し合わせは法律に違反しないのだろうか。
     これについては,違法・適法二つの考え方があり得る。
     違法説の根拠は,管理費滞納者の権利制限は法に定める限度でのみ許されるところ,前記の通り義務違反者に対する措置の内容は極めて限定的なので,それ以外の種類の制約は一切認められないとする考え方による。
     他方,適法説は,管理者資格あるいは理事の資格について法律はなんら規定していないから,資格制限は原則として当該団体の自由であるとの考え方による。

     少々切り口を変えて,私的団体の理事の被選任権内容に司法的判断が及ぶのかどうかという議論の建て方をすると,いわゆる「部分社会の法理」の問題になる。
     この点,最高裁判例は,「司法裁判権が、憲法又は他の法律によつてその権限に属するものとされているものの外、一切の法律上の争訟に及ぶことは、裁判所法三条の明定するところであるが、ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。一口に法律上の係争といつても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがあるのである。けだし、自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがあるからである。本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする。(尤も昭和三五年三月九日大法廷判決―民集一四巻三号三五五頁以下―は議員の除名処分を司法裁判の権限内の事項としているが、右は議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らないからであつて、本件における議員の出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎないものとは自ら趣を異にしているのである。従つて、前者を司法裁判権に服させても、後者については別途に考慮し、これを司法裁判権の対象から除き、当該自治団体の自治的措置に委ねるを適当とするのである。)(昭和35年10月19日最高裁判所大法廷判決昭和34年(オ)第10号懲罰決議等取消請求事件)」としており,その後の政党内部の処分に関する昭和63年12月20日最高裁判所第3小法廷判決昭和60年(オ)第4号家屋明渡等請求事件で「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない」としている。
     要するに,①一般市民としての権利侵害でない内部問題については,完全に自治に委ねられており,国法上適法かどうかの判断はされない。②仮に一般市民としての権利侵害であっても,まずは内部規範を参照し,その規範が公序良俗に反しないかどうかを確認し,規範が合法であれば規範による。③規範が無効・不存在であれば条理(ここでは,わかりやすくするため「一般常識」と言い換えておく)に基づいて,適正手続が取られていたかどうかを判断する。という論理流れになる。

     この考え方に基づいて,管理者や理事の被選任資格に「管理費滞納者でないこと」を定める内部規約を再考してみると,管理者や理事の資格についてはなんら法律上の規律があるわけではないので,その内容は当該団体内部で自由に定めればよいということになる。もし当該資格制限の事由が,「外国人であること」「女性であること」だったりすると,直接に一般市民としての権利侵害(平等原則違反)の問題となってくるが,「管理費滞納者であること」というのは,純然たる内部問題にすぎないので,当該資格制限が適法か否かを問題にする余地がないことになろう。

     この考察からすると,タイトルの質問に対しては,「違法・適法の問題ではないので,集会や理事会で議論して自由に決めてください。その意味では,管理費滞納者に理事資格を認めないことも法律上可能です。」ということになる。