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「それでもボクはやってない」

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 3月1日フジテレビで放映されたので,見た。二人の裁判官に真実味があった。あれはいずれも決して架空の裁判官ではない。まさに典型的に存在する実際の裁判官の姿が描かれていた。弁護士は東京風の味付けで少々物足りなかった。大阪の刑事弁護士が監修したらもっとアグレッシブな弁護になったかもしれない。
 いずれにしろ,刑事裁判に無縁の一般市民は,この映画を見てもなお,「それでも裁判官は間違えない」「警察官は法廷で嘘を言わない」と思っているかもしれない。しかし,実際に裁判を戦うことは,現状の刑事司法制度では,両手両足を縛られて泳げといわれているくらいに、非常に大変なことなのだ。冒頭のシーンで出てきた「当番弁護士」の言葉を,えん罪被害を受けた無実の当人が受け入れるのは難しいだろう。しかし,それが現実である以上は,そう言わざるを得ない。確かに,弁護士でなければあの当番弁護士の心情を理解するのは難しいかもしれない。

 文明国で,取り調べに弁護士が立ち会えない法制度はもはや少数である。もしかすると,警察の取り調べに弁護士が立ち会えないという現状を知って驚く方が多いかもしれない。外国映画では,弁護士が警察署の留置場にまで入り込んでくる場面があるが,日本では,決してあり得ないのだ。
 日弁連では,捜査過程を透明化し,法廷での審理に反映させるため,「取り調べ過程の録画を求める請願」を集めている。
 個人的に刑事司法への絶望は深く,ここ数年,刑事は控訴案件しか扱わないことにして,民事弁護士に専念している。しかし,刑事弁護士は,絶望の壁を乗り越えようとしてがんばっている。
 法務大臣は「えん罪」という言葉が嫌いなようだが,どう呼ぶにしろ,無実の者が刑事司法の欠陥により危うく有罪にされそうになったり,現に有罪になってしまったりするという現実は存在する。一人二人のえん罪被害者を出しても,真犯人を逃さないことが大切だと考えるのも,一つの思想かもしれない。しかし,私はそれに与しない。


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