弁護士のオシゴト

 弁護士の仕事にはいろいろあるが,大企業の経済的利益を必死になって守ろうとする仕事は,それだけ大きな利益を得ることができるのだから,報酬も大きくてよかろう(特許事件やM&A紛争など)。そういう仕事は,注目を浴びて花形的な扱いを受け,最近の若い弁護士や,事業意欲のある中堅・古参弁護士がこぞって参入したがっている分野である。
 他方,弁護士の仕事には、刑事被告人の利益を守るという地味な仕事もある。そして,大企業から巨額報酬を受け取っている弁護士は,まず,皆無といっていいほど,そのような仕事をしていないのが実情である。
 このような地味な仕事は,「どうしてそんな犯罪者の味方をするのか」という一般市民からの素朴な反感を受けているのと同時に,「どうせ起訴されたら99%有罪なのだから弁護人をつけても仕方がない」という司法・行政機関の冷遇的態度に遭っており,さらに,「のれんに腕押し、糠に釘」という感もする努力に見合わない結論しか得られない逮捕・勾留への準抗告、訴訟での主張・立証、控訴・上告という刑事司法過程での実務的作業に携わる弁護人自身の空虚感も乗じて、「絶望的」状況にある。
 それでもなお,多くの弁護士達が、国選付添人制度、被疑者公選弁護制度などの実現へ向けて地道な努力をしているのは、ひとえに、弁護士が依って立つ「自由と正義」の精神による。
 そのような原始的な自由と正義を擁護するための仕事は,それだけではなんらの経済的利益を生まない。従って、経済的な報酬がなくても仕方がない。しかし,それでも必死になって守っているものはある。それは,我々の社会の「自由と正義」を実現するための「公正ルール」というきわめて大きな,金銭には代えられないほど大きな利益なのである。
 たとえば,御上のありがたいご託宣によって全ての物事が決まるとき、その判断の公正を担保するのは,ただ,その御上が公正であるという一点のみである。ところが,歴史的事実は、必ずしも御上が常に公正であるとは限らないことを示している。そのために我々の祖先達は,「刑事司法制度」を工夫して現在の制度を作り上げてきた。そこに示された刑事手続の諸原則は「人類の無形世界遺産」とでもいうべき貴重な資産なのである。
 私は,弁護士になった初心を忘れないために、たとえ手に入る経済的報酬はすくなくても,これからも,不公正な手続きが執られている刑事事件に対しては、徹底的に戦っていこうと思っている。
 ただ,きれい事だけで済まないのも現実社会なので,自分と事務所の事務員が飢え死にせず,事務所のオーナーにきちんと家賃が払える程度の収入は必ず確保しなくちゃいけないというのも,またそれはそれで零細個人業主としての悲哀なのではあるが・・・・

「弁護士のオシゴト」への1件のフィードバック

  1. 行政

    行政行政(ぎょうせい)とは、形式的意義においては、行政府(日本では内閣など)に委ねられた国家機能のことをいう。これに対し、積極的に実質的な定義づけを行うのは困難であるとされており、公法学上は、国家の権能のうち立法と司法を除いた残余の権能を指すとする見解(控除説)が支配的である。このような控除説による……

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