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意匠の間接侵害

 意匠法38条1号では、ある意匠の製造のみに使う物の製造販売も意匠権侵害になるとされています。
 これは、直接意匠製品を製造販売するのではないけれども、意匠権を侵害するという意味で、「間接侵害」と言われます。典型的には、意匠製品を分解して、その部品(汎用性のないもの)を販売したり、意匠製品の組み立てキットを製造販売したりすることがそれに当たります。
 その他、裁判例で争われた事実として、建築用足場の足場と柵を一体として意匠権を有していた会社が、足場だけを販売していた業者に対して意匠権侵害で賠償請求をした案件があります。
 このケースでは、足場部分の部品には外観上、特段の独創性新規性もなく、また、機能的にも柵なしで単体として使われることがあるので、「建築足場柵」という意匠権者の製品の「製造のみ」に使われるとはいえないと判断されましたが、「のみ」かどうかは本当に難しい判断といえます。
 同様の間接侵害の規定は、特許法(101条)や商標法(37条8号)にもあります。

 裁判をやってみないとはっきりしたことは言えないという問題は、一般に「予測可能性」に乏しい事案だと表現されます。
 法律は、起こりうる事態を想定予測して定めてあるのですが、法律制定後に、状況が変化することはよくあり、また、状況が変わっていなくても、法解釈が裁判所に委ねられている以上、完全な予測は不可能というほかありません。
 問題ありうるケースでは、裁判で勝敗をつけることが、大きなリスクを伴うおそれがあるため、案件に応じて、裁判の断念や、損切りなどを含めて、リスク許容性を考慮した慎重な判断が必要になります。

意匠の保護範囲

 意匠とは、一般用語では、製品のデザインのことですが、形状や色彩の組み合わせが他のものと違う特徴的な独創性とそれまでにない新規性をもつときに限り、意匠権として意匠法上保護されます。

 工業製品を作っている会社には必須の知的財産ですが、流通においてもパッケージデザインなどで利用価値があります。
 商標権と違って、ブランド維持とは関係がなく、あくまでも新規の創作物を保護する制度なので、登録から20年に限るものとされ、更新はありません。

 この性質から、意匠を巡る紛争は、どちらかと言えば特許紛争に似ています。
 意匠は、特許庁で登録され、その登録に異議があれば、特許庁での審決を経て、最終的には裁判所で争われることになります。

 多くの場合、審決と併せて、不正競争行為の訴えもされ、その場合の損害額はその製品の売上利益となってしまいますので、製造会社においては、まさに死活問題になる重要紛争です。
 商標・意匠・特許については、国家資格者「弁理士」の仕事として「特許事務所」で取り扱われており、弁護士が訴訟をするケースでも、特許事務所の協力が欠かせません。日ごろから膨大な知的財産権にかかわっている弁理士のセンスは訴訟を進める上でも非常に参考になります。
 意匠権の保護は、その意匠がいかに独創的で創作性があってこれまでに存在していなかったものであるかを、文章表現で説明できるかどうかが勝負です。一例として、日清食品の「カップヌードル」事件を紹介します。
 特許庁の審判では、このカップヌードルの容器は「全体形状を略逆円錐台形とした容器において、全体の地色が明調子、周側部に中間調子と暗調子で模様を表したもの」だと表現されています。カップ麺容器を意匠登録するにあたり、弁理士がいかに描写するかという苦労が現れています。そして、カップヌードルの文字部分について特許庁では「CUP及びNOODLEのローマ字を中間調子の線条で囲むかなり図案化した字体で左右に重ねあわさるように構成して2段に表し」と表現して、そのカップ容器がそれまでにありふれていたものとは違うのだと言いました。
 ところが、裁判所は、言語の伝達手段としての文字本来の機能を失っているものに模様としての創作性を認める余地があることを述べつつ、本件の「CUP NOODLE」の文字部分は、まだ文字伝達機能を失っていない(カップ入りの麺という意味が読み取れる)から、模様ではなく、カップ容器自体にも創作性はないと判断しました。

 ちなみに、文字のデザイン(フォントあるいはタイプフェイス)は意匠法では保護されません。
 現行の意匠審査基準では、意匠対象物に文字が表現してあってもそのまま審査登録するという扱いになってはいますが、それはその文字を意匠として保護することまで意味しないので注意が必要です。

 外国でのフォント・タイプフェイスの保護状況にも国ごとに非常に大きな違いがあって、現状では、文字のデザインそのものが知的財産として保護されるためのハードルはまだ高いと言えます。
 意匠権ではなく、著作権での保護を模索したモリサワ事件では、最高裁判決は文字のフォントが著作権として保護される要件を述べて、結論としてモリサワフォントの著作物性を否定しています。

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参考リンク 特許庁サイト