カテゴリー: コンピューター

  • 著名商品等の表示

     以前の記事「不正競争防止法19条で保護されるケース」で、一定の場合に自由に使ってよい表示があること(地名、自己の氏名、先使用)を説明しました。
     今回は、一定の場合に使ってはいけない表示についてです。

     不正競争防止法2条1項2号では、他人の業務について、すでに使われている商品や営業の表示を使ったらダメと規定しています。長い名称の一部として紛れ込ませることも基本的に不可です。
     裁判で負けた事例としては、「青山学院」という名前を、青山学院とはまったく関係のない人が、自分の経営する学校の地名にくっつけて、「呉青山学院」という名前にした例があります。この類型の裁判で勝つためには、当該名称が「著名ではない」ことを主張しないといけないので、とにかく、誰もが知っているようなすでに有名な名称を使いたいときには、許諾を得ることが先決と思います。
     裁判になって、被告が負けている例としては、ほかに「虎屋」「三菱」「J-PHONE」「JACCS」などがあります。どれもその文字を見ただけで、どんな事業をしているかすぐにわかるようなものばかりですよね。

     ところで、J-PHONEやJACCS、sonybank事件などは、「ドメイン」に関する事件である点で、特徴があります。
     ドメインとは、インターネット上で使われる名前のことです。インターネット上で情報のやり取りをするためには、IPアドレスという番号(我が家の玄関の表札みたいなものです)をインターネット全体に周知させる必要があります(これによって、世界中から間違いなく目的地を訪問できます)。IPアドレス(IPv4の場合)は、「177.133.144.155」のように、3桁×4組の数字で示されています(このほか、IPv6というやつもあり、こちらはもっと長いですけど、そこの解説が目的ではないので、省略します)。
     この数字の羅列だけでは人の目による識別性が悪いので、番号と名称を対応させた仕組みが「ドメイン」です(ごく簡単に説明しましたが、実際はもっと複雑な仕組みです)。
     私の保有ドメインは、「uhl.jp」です。全世界に同じものは絶対にありません。重複しないように、ドメイン管理組織によって管理されているからです。ちなみに「.jp」は、日本を表すトップレベルドメインです。最近では、業種別とかグループ別などの新しいトップレベルドメインが次々に設定されていて、もはや国別を表すトップレベルドメインは少数派になってしまっています。申請者が希望したドメイン文字列が同一トップレベルドメイン中に既存でなければ、どんなものでも、だれでも、簡単に取得できます。

     かつては、ドメインが全世界で一つしかないというユニークさと、誰でも無審査で取得できるという点を悪用して、上記のように、J-POHNEとかsonyとかを含む名前を、それらの企業と関係のない人が勝手に取得し、いざ当該企業がそのドメインを必要とした際に、高値で売りつけようとする事例が頻発していました。
     現在では、著名ドメインを取っても、裁判で負けて無駄骨になることが周知されたので、以前のような紛争は激減しています。また、日本知的財産仲裁センターがJPドメインに関する紛争処理の仲裁を受け付けていますので、類似ドメインの排除が必要になった場合に、裁判をするまでの必要は通常の場合ありません。

  • 叩いたら本当に直ったノートパソコン(駄

     先ほど、ひとしきりデスクPCでとある作業を終えて、さて、ノートパソコンのほうで仕事すっかと画面を開いたら、いきなりレインボー状態でちらついている。いったん電源を落として再度入れたら今度は真っ暗のまま。

    ・・・これはまいった。と思い、

    裏ブタを開けて基盤と配線をチェックし、バッテリーを外して初期化してから外付けディスプレイにつないでみたら外部への画像出力は出ている。
    これは液晶逝ってもうたかと青くなり、いつものようにGoogle先生に教えを乞うと、こんな回答が・・・

    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1390087513 液晶下部、右端か左端の裏側から軽くコンコンとたたけば、一時的に直る可能性もあります。

    ・・・まさか、昔のブラウン管テレビじゃあるまいし・・・と、半信半疑で、画面裏から軽く手でコンコンと叩くと・・・

    なんと、直りました(^^;

    いったいどんな原理やねんとおもいつつ、直ったからよしとする。ありがとう>知恵袋回答者様

    しかし、4年使ったんでそろそろ買い替えかもしれないなあ・・・

  • タイプフェイス事件

     だれもがコンピューターを美しい見た目の画面で操作できる(WYSIWYG)ようになって20年以上が経過し、現代のコンピューターやプリンターにはいろいろな種類のフォントがたくさん入っています。
     このフォントに関する文字デザイン部分(タイプフェイス)にはどのような法律の保護があるのでしょうか。
     考えられるのは著作権、意匠権、一般の不法行為法上の法律上保護相当利益、不正競争防止法などです。

     著作権については、かなり高度の創作性・審美性がなければ、保護しないと判断した最高裁判例があり、この判例による限り、タイプフェイスを著作権で保護するのは無理があります。最高裁基準で著作権の対象になるのは、書家の筆致などに限られるものと思われます。ただし、フォントを一定のプログラムに基づいて創作するソフトウエアに関しては、著作権法での保護対象です(これは諸外国でも同様)。

     意匠権については、アメリカ合衆国やEU諸国でタイプフェイスが保護対象とされている例があるものの、平成18年・19年に財団法人知的財産研究所が実施した調査によると、日本の意匠法の保護制度とは違った面があり、そのまま日本法には取り入れがたい状況と言われています。

     一般の不法行為法で、例えば完全な模倣(デッドコピーといわれます)をしたものであれば、違法性があり、タイプフェイスとして法的に保護される場合があるとは言われていますが、これも実務上確立した見解とまではいえません。

     不正競争防止法ではどうかというと、平成5年の東京高裁決定(モリサワフォント事件)では、平成5年改正前の法律に基づいて、デジタル化した書体を収めたプリンター等の販売の差し止め仮処分に関して、不正競争行為と認めて、差し止めの仮処分を認めた例があります。しかし、その後法改正で模倣商品の譲渡に関する規定が加わったことで、この裁判例がそのまま一般化できるかどうかには議論があります。

     以上のとおり、タイプフェイスが知的財産であるという共通認識はあるものの、それを法的にどのような枠組みで保護していくかは、なかなか難しい問題のようです。
     現状としては、利用許諾契約でユーザーを囲い込むことでデザイン業者の利益が確保されていますが、タイプフェイスの権利性がはっきりしないために、海賊版や模倣品による侵害からの防御が意匠や特許などの場合よりもさらに困難な実情もあります。

     とはいえ、もともとは先人が意思伝達のために数千年を経て育ててきた結果が文字になって現代に流通していることを考えると、文字の変形バージョンに対するデザイン料の収受を超えて、万人に主張できる一般的な権利性を認めることに、やや躊躇を覚えるのは、、、私だけでしょうか。

    参考文献リスト