投稿者: YamanouchiKatsura

  • 生活保護引き下げは生活保護受給世帯だけに影響するわけではない

    詳しくは日弁連作成のパンフレット集をご覧ください。

    それがよいことか悪いことかは国民自身が決めることですが、今の政権は、間違いなく、貧富の格差を広げる方向性にあると思います。

    生活保護は働かない人の最低基準だから、真面目に働く勤労者には関係ないと思っていませんか。

    実は決してそうでないということが、いろいろ説明されていますので、やや割引ながらでも一読してみてください。

    日弁連パンフで論点はほぼ網羅されていると思いますが、あえて付け加えるとしたら、最近実感したことでいうと、

    例えば、債権差し押さえにおいて、「差し押さえ範囲変更」の申し立てというものがあり、裁判所の裁量によって、法定の割合での差し押さえ範囲を特別に増減できる仕組みがあります。

    これは、減額変更の場合、基本的に「生活保護水準を満たすかどうか」という発想から斟酌されていて、法定の差し押さえ割合を適用した場合、「生活保護水準+勤労経費」に満たなければ、ある程度の減額変更を認めてくれます。

    生活保護水準が引き下げられれば、勤労者である債務者は、債務名義に基づく差し押さえがされた場合、これまでは認められていた差し押さえ範囲の変更が、却下されたり、減額変更幅が少なくなったりします。

    過払い請求が落ち着いて、今後は有名義債務を背負った方々に対する差し押さえ案件が増えてくるかもしれません。そうなると、この生活保護水準引き下げは、確実に債務者世帯の生計を圧迫するでしょう。

    経済全体で考えると非常に難しい問題ではありますが、税制や予算などでもうちょっと別のやりようがあるのではないだろうかと、個人的には思います。

    みなさまはいかがでしょうか。

  • 個人(自然人)と会社(法人),その他の団体について

    取引の相手が個人であるか会社であるかはっきりさせることは、実務上重要なことです。

    世の中にはいろいろな団体がありますが,法的に権利義務の主体になりうる団体には必ず法律の根拠があります。
    逆に言えば,法律の根拠に基づかない「団体」には,個人(自然人)と同じような権利義務は原則として認められません。「法人」とは,生まれながらの人(自然人)ではないものについて,「法(律)」で自然人と同じような権利義務を認めるという意味です。

    法人を認める根拠になる法律のうち,いわゆる会社に適用されているのが「会社法」です。この3条に「会社は法人とする」とシンプルに書かれてありますが,このたった一行の条文により,「会社」が代表者や役員,従業員などの個人から離れて,一つの「法的主体」として「会社」の名前でいろいろな取引をすることが可能になっています。

    法人は「会社」だけではありません。例えば,宗教法による宗教法人,学校法による学校法人,医療法による医療法人などは,よくみられるものですし,「法人」と名乗らない法人(例:協同組合労働金庫信用金庫商工会議所など)もあります。

    2008年法改正までは,公益目的でない非営利法人は,法人格が認められていなかったのですが,改正後は,「一般法人」という非公益・非営利目的の法人の設立が認められるようになりました(かつて2002年中間法人法(廃止)に基づく法人もありましたが,これも非公益・非営利の団体には認められていませんでした)。
    このため,2008年改正法以前からあって,財産的裏付けや実績・伝統のある「(民法に基づく,公益目的のある)社団・財団法人」と,法改正後に出来た「(公益目的・非営利とは限らない)一般社団・財団法人」という紛らわしい呼び名の団体が出来ています。このような誤解を生みやすい状況に乗じて,法改正後の「一般社団法人」であるのに,あたかも法改正前からの「社団法人(正確には「特例社団法人」といいます)」であるかのように対外的に表示をして,信用力を偽る団体が希にありますので,ここは要注意です。

    公益目的がある場合であって,なおかつそのことを表示したい場合には,公益法人認定法に基づく認定が必要なので,その認定がないのに勝手に「公益法人」を名乗ることはできません。

    ちなみに,いわゆるNPOが法人となるのは,1998年特定非営利活動促進法に基づくものなので,一般社団法人とはやや違います。

    法人である場合には,かならず代表者があり規約の定めがあります。会社でいえば代表取締役であり定款です。その他の法人でもこの二つの基本は同じです。
    また,法人は,登記がされているので,法務局で調べれば,代表者の氏名住所が分かりますが,活動実体がない法人(休眠法人)では,長らく登記事項が変更されずに放置されている場合もありますので,必ず実体がわかるというものでもありません。

    このようなことを考えると,個人的あるいは経済的な裏付けのない「法人」は,非常にはかないものですので,法人相手に取引をする場合には,法人登記を確認することのほかに,経営者、代表者等の個人的な信用や経営状態(貸借対照表、損益計算書)をよく見極めることが重要になります。


    某所で引用していただいたので、見直して補記

    冒頭に自然人と法人以外には「原則として」権利義務主体性が認められないと書いたのは、いわゆる「権利能力なき社団」を念頭に置いたものです。これが「その他の団体」にあたります。その点の説明が落ちていたので、補足します。

    権利能力なき社団とは、「団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているもの(最判昭和39年10月15日)」と判例上定義されています。
    この定義に当てはまれば、少なくとも日本法領域にあっては、代表者が団体を代表して民事訴訟を提起できることから、あたかも団体が権利義務の主体であるかのようにふるまうことはできます。ただし、権利義務自体は、その団体の構成員全員が「総有(個々の構成員に持分が認められない特殊な共同所有関係)」するのであって、団体そのものが権利義務を持つわけではありません(だから「権利能力なき」社団といわれる)。

    権利能力なき社団による権利者表示は、当該団体の通称名と代表者・管理者個人名を列記するのが日本法の流儀に合致すると思われます。

    なお、著作権保護に関し、日本法領域では無方式主義ですから、これで問題ありませんが、そもそも権利者表示を要する法領域にあっては、厳密にいえば、権利能力なき社団としての著作権者の特定のためには、当該団体構成員全員の個人名の表示が必要ということになります。

  • 中小企業・個人事業主・各種団体等における顧問弁護士の使い方

     企業法務に限らず、事業や団体の運営にあたっては,様々な法的問題点を抱え込みます。これを法的に適切に解決していくことや,未然に紛争予防することは,円滑で持続的な経営・団体の維持発展につながります。
     法令順守が求められる事業環境のなかで、中小企業や個人事業主・各種団体等は顧問弁護士をどのように使ったらよいでしょうか。

    一般に顧問弁護士契約のメリットは次のような点だと言われています。
    ・相談先が決まっている
      問題が起きる都度,弁護士を探す手間が省けます。

    ・継続的な状況把握がされている
      継続的に関わるので,以前からの経過や会社の状況に応じた臨機応変の対応が可能ですし、予防法務の可能性も広がります。

    ・社外的な信用が増す
      顧問弁護士がいることは社外的信用を増します。

    ・法務コストの削減
      社内に法的紛争処理専門の人材を置くのと同じ効果が低いコストで実施できます。

    ・従業員への福利厚生,取引先へのサービスとして利用できる
      会社と利害関係のない相談であれば,従業員や取引先にもサービスの一環として弁護士を紹介できます。
     
     弁護士顧問契約を存分にご利用頂き,御社にとってのメリットをご活用下さい。

     他方,顧問契約にかかわらず一般顧客と同じの点やケースバイケースの点もあります。
    ・基本的には緊急性のある順・先着順の受付け・業務遂行であること
     できる限り顧問先を優先しますが,時間的に常に最優先ではありません。保全処分(仮差押・仮処分)や、DV,民事介入暴力案件などの処理中は,一時的に他の事務が停滞することがあります。当職のような小規模事務所では、やむを得ない点ではありますが、弁護士の仕事は職人的なワンオフサービスですので、最初から複数担当制を敷いていなければ、大きな事務所でも同様の事態が生じる可能性はあります。

    ・電話やメールでの相談ができるかどうか
     当職の場合,一般の相談者でも,いちど受任した案件があれば、その後、当該事件が終了した後であっても、電話やメールでの相談であれば無料(面談は別途有料です)で受けていますので,その点での顧問先との違いはありません。ただし,顧問先には,ホットラインとして当職の携帯電話番号をお伝えして,夜間・土日等の業務時間外にも対応している点が一般相談者の場合と違います。

    ・外国法務,特許,税務等,対応できない分野がある
     この場合は,原則として、当職よりも信頼のおける別の法律事務所を紹介させていただくことになります。これも当職のような小規模事務所ではやむを得ないことですが、当職よりも品質の高い対応が期待できる他の法律事務所があれば、依頼者の利益を考慮して、そちらのほうをおすすめするのはむしろ当然のことと考えていますので、無理に依頼者や顧問先を抱え込むようなことは致しません。

    ・個別に相談するよりも相談料が割安かどうか
     ご契約内容によっては,スポットで依頼をいただくほうが割安になるケースもあります。たとえば、当職の営利法人・個人顧問契約の最低基準(月額3万円以上)によると、年間36時間以上の法律相談や,400万円相当以上の売掛金請求事件のご依頼がなければ,個別に相談料や着手金をいただくより割高になります。もっとも、顧問契約には,上述のような単純に金銭に換算できないメリットもありますので,費用だけでの比較は不適切かもしれません。

     法律・裁判例は常に変化し続けており、法令順守経営は専門家のチェックなしには相当難しいものになっています。契約書チェック,債権回収,社内規則等の整備・見直し,社員の法務教育などの一般的な企業法務や民事事件の代理業務のほか、従業員・取引先へのサービスとしての弁護士紹介,業務監査,内部通報窓口の設置などにも,顧問弁護士をご活用いただければ幸いです。