投稿者: YamanouchiKatsura

  • 社長・取締役・支店長・支配人・使用人・従業員・社員・株主・・・

     会社は多くの人材によって支えられます。それぞれにいろいろな呼び名がありますが、一般の用語と会社法・商法での用語と違うことがあります。

     タイトルの用語のうち、会社法・商法で使われる法律用語は、「取締役」「支配人」「使用人」「社員」「株主」です。

     社長は「代表権を有する取締役」に付されることのある名称(会社法354条)です。
     支店長は多くの場合「支配人(同法10条 会社に代わって事業に関する一切の権限を持つ)」ですが、「使用人(同法11条2項 包括的な決裁権を持たない従業員)」に過ぎない場合もあり得ます。

     一般用語では、「社員」といえば「従業員」のことですが、法律用語では「社員」は「社団法人の構成員」を意味し、従業員は「使用人」とほぼ同じです。株式会社の「社員(法律用語)」を「株主」と言います。
     「支配人」は一般用語では、ホテルや旅館の筆頭責任者のイメージですが、法律用語では、一定の本店・支店範囲で業務上の専決権を持っている者のことをいいます。支配人は、裁判上の権限をもっている(会社法11条1項)ので、貸金業者が自社の関与する裁判を担当させるために、業務上の専決権を持たない名目上の「支配人」を大量に登記(会社法918条)して、裁判業務に専属させていることが問題になっています。

     法律に定めのない職制は、社内で自由に設計することができますが、取締役や支配人は法律に権限の定めがありますので、そのような役職名の使用には一定の制約があります。

     ところで、大災害が起こると、普段では考えられないことが起こり得ます。
     人材の観点からいうと、株式会社における取締役・株主の地位は、他の立場とは違って、特殊な意味を持ちますので、その喪失のパターンを以下に示しておきます。

     まず、代表取締役が亡くなった場合、残った役員のうちのだれかが仮代表を務めるか、新たな代表を選ぶかする必要があります。

     社長以下役員全員が亡くなった場合には、株主総会で新たな取締役選任をする必要があります。時効中断のために訴訟を起こす必要など時間的に切迫した状況があれば、裁判所への申し立てにより、特別代理人や仮代表者を選任する仕組もあります。

     株主全員が亡くなった場合でも、その相続人がいれば相続放棄をしない限り、株式が相続されます。突然会社が消滅することはありません。

     株主全員と、その相続人全員が亡くなり、特別縁故者(家庭裁判所が許可をすれば、相続人との個人的な縁が深かった人へ、その人の持つ財産(株式に限らず、全財産やその一部)が承継される)もいない場合には、その株式は国有になります。
     相続財産管理人が選任されれば、なんらかの方法で換価して、国庫に金銭を納付しますが、相続財産管理がなければ、そのまま塩漬けになってしまい、事実上会社が消滅します。

  • 商号と商標の違い

    違いをまとめました

    商号 商標
    意味 会社の名前(1社に一つ) 商品やサービスの名前(1社が多数持つことも可)
    登録 法務局・登記 特許庁・登録
    根拠 会社法,商業登記法 商標法
    記号 なし(法務局の認める文字でないと登記不可) あり(記号や図形も登録可)
    期間 有効期限なし 10年ごと更新必要

     会社が大きくなり、需要者に周知されてくると,その名称そのものが一種の財産的価値を帯びてきます。ネームバリューとも言われます。
     最近では,コーポレイトアイデンティティ(CI)とか,ブランディングということで,広告業者や特許事務所などが,商号と商標の同時登録という広告戦略を勧めているようです。商号の登記・維持には登記費用とその後の変更登記費用がかかり,商標には出願登録時に約20万円くらい,更新時(10年ごと)に10万円くらいの費用がかかります。かといって,それだけの価値を生み出した時点で出願しようとしても,先に登録されてしまったりすることがあり,ブランディングの観点からは、著名にならないうちに先取りしておかなければなりません。
     商号や商標を不正に登記・登録・使用することは、民法や不正競争防止法により損害賠償請求の対象となります。不正使用の被害拡大を防止するための差止という方法もあります。
     ちなみに、「商標権」は知的財産権の一種です。このほか会社関連では、「意匠権」という言葉もよく出てきます。
     「意匠」は、物のデザインを保護する仕組で、商標と同じように特許庁の登録が必要です。製造企業では非常に重要な権利といえます。非製造企業では、サービスそのものの名称である「商標」のほか、独創的なサービスの仕組を一定のシステムと結びつけることで、「特許」を取得することが考えられますが、ありふれたアイデアはすでに登録されていることが多く、非常に多くの先行事例があるので、さらにその先を行く新しい発想が必要なため、なかなか狭き門といえます。

  • 離婚問題:養育費は子どもの権利とみるべきことについて の注意喚起

    注意喚起です。

    ネット情報を検索すると、「養育費の請求を、離婚協議書の包括的放棄・清算条項で阻止できる」という趣旨の情報が流布していますがかつて見られましたが、これは、明らかに間違いです(この記事を書いてから?ほぼなくなったようです 2014/10/20 追記)。

    財産分与慰謝料は、夫婦間の債権債務関係に基づくものなので、清算条項の範囲に含まれます。そういう意味では、包括清算条項は確かに有用です。しかし、養育費は子どもの権利(扶養請求ですが、未成熟子の扶養を養育というようです)なので、夫婦間の放棄合意(増減不可合意も)は処分権がないという意味で無効(民881)であり、夫婦間の合意としても公序良俗違反で無効になります(一定の当事者間効力を認めないわけではないけれども、子の福祉が最優先になるので、それに抵触する限りは公序良俗違反であるということ)。

    養育費は、子どもの必要を満たすために、夫婦の資力に応じて分担しあう支出ですので、夫婦の資力の変化や子どもの必要具合の変化に応じて、いつでも権利者・義務者双方から増額・減額の請求ができるものです(協議がつかなければ、家庭裁判所に「養育費増額・減額請求調停の申し立て」ができます)。

    夫婦間でとりあえず養育費内容を決めているのは、あくまでも子の福祉のための後見的配慮であるわけで、そういう意味で、個人的には、養育費については当事者の調整任せにしないで、もっと家庭裁判所の職権的な判断を強く出してもいいのではと思っていますけれども。。。

    協議離婚の公正証書に記載される包括放棄清算条項に、規定以上の養育費の請求放棄まで含まれているように当事者が理解していたとしたら、それは誤りですが、もしかすると公証人が、そこまで丁寧に意思確認してくれないかもしれませんので、上記のような誤情報に基づく一定数の錯誤が発生していて、そのうち紛争になる可能性はあります。

    繰り返しますが、養育費を包括放棄し、あるいは増減不可とする内容の離婚協議書の条項は、無効ですので、ご注意ください。