投稿者: YamanouchiKatsura

  • スパムメール警告 ドメイン・レジストラ関連

    この連休中、レジストラを名乗る「ygregistry.cn」から、変なメールが届きました。
    Dear Manager,
    (If you are not the person who is in charge of this, please forward this to your CEO,Thanks)
    This email is from China domain name registration center, which mainly deal with the domain name registration and dispute internationally in China.
    We received an application from Huake Ltd on November 17, 2014. They want to register " uhl " as their Internet Keyword and " uhl .cn "、" uhl .com.cn " 、" uhl .net.cn "、" uhl .org.cn " domain names etc.., they are in China domain names. But after checking it, we find "uhl " conflicts with your company. In order to deal with this matter better, so we send you email and confirm whether this company is your distributor or business partner in China or not?
    Best Regards,
    Jim
    General Manager
    Shanghai Office (Head Office)
    3002, Nanhai Building, No. 854 Nandan Road,
    Xuhui District, Shanghai 200070, China
    Tel: +86 216191 8696
    Mobile: +86 1870199 4951
    Fax: +86 216191 8697
    Web: ygregistry.cn

     内容は、「中国の会社がuhlを登録したいというので、調べたら、あなたがすでに類似ドメイン名を使っていることがわかった。うまいこと話つけたるさかいに、連絡くれ、お前がヒラなら責任者につなげ」というようなものです。

     ちなみに、私は3文字URLがほしくて、すでに.comなど他のリージョンで取得されていること、uhlが英語としてはあまりいい語呂ではないこと等を承知しつつ、uhl.jpのドメインを取得しています。世界各国のuhlサイトと、当uhl.jpサイトとは、なんの資本・人的関係もありません。幸い、どこのサイトともそんなに爆発的にメジャーなものではない(?)ようなので、これまでさしたるクレームもなく長年使ってきました。そのうち、日本の名だたるトップ企業並みに有名なところが、uhl.jpを使いたいと言ってきたら、高値でお引き取りいただけないかと頼んでみたいなとは思っています。。。

     さて、ドメインになじみのない方が、メール文面を読むと、慌てて上司に報告するか、あるいは、なにかうまい話があるのかと思って連絡を取ってみるという行動に出かねないと思われ、ひとまず警告です。

     まず、メールに記載されたレジストラ名を日本のサイトから検索すると、http://katz515.exblog.jp/10260540が、かなり以前に類似手口のメール案件を紹介しています。
     さらに、世界のサイトを見ると、http://www.europeandomaincentre.com/pages/news-room/domain-management-news/hey!-got-an-email-from-china-domain-name-registration-center-asian-domain-registration-service-in-china-the-department-of-registration-service-in-china-etc.#.VHOawNgcRhEという記事がヒットしました。
     どうやら、数多くの虚実ドメインを使って、ドメイン登録を悪用・乱用して儲けようとする中国アジア系の勢力が、数年前から微妙に手口を変えつつ、活動しているようです。

     上記記事中でも紹介されていますが、基本的対応は「無視」で差し支えありません。
     もし、将来的に中国での事業展開をお考えであれば、その関連のドメインを確保しておく必要があるかもしれませんが、それは日本のレジストラでやればいいことです。

     グローバルな経済文化活動では、リスク・被害もグローバルスケールになるんだなあと、改めて実感した次第です。

     皆様もどうか被害に遭われませんように。

     Save time and money!

  • 解雇予告手当

     労働基準法によって、解雇の30日前に予告するか、または30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払って解雇するかを選択しなければならないことはご承知のことと存じます。
     なお、予告日数は、1日分の予告手当を支払うことで、短縮できますので、例えば、15日分の予告手当を払って、15日前に解雇予告することは可能です。要は30日分の猶予は最低必要ですよということです。

     この義務に違反した場合、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
     また、裁判を起こされると、予告手当の未払金の他に、それと同額の付加金(要は倍払いの義務)が課されることがあります。

     問題は、解雇予告の日数や予告手当の支払い額が解雇日までの分に対して不足した場合に、その解雇は無効になるのか、それとも、一定の条件が整えば有効になるのかという点です。

     この点については古い最高裁判例があり、「使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後、30日間を経過するか、または通知後に予告手当の支払いをしたときは、解雇の効力がある」と判断されています。
     この事案では、予告手当を払わずに解雇し、その後労働者から未払給与支払い等の裁判を起こされましたが、解雇通知から8か月後に、解雇予告手当と支払日までの利息を支払ったというものでした。

     最高裁判例によれば、解雇通知を出す時点で、解雇日まで30日を切っている場合であっても、通知の日から30日が経過したら解雇の効力があり、その場合には、30日分の平均賃金を支払わなくてもよい(解雇の効力発生までの間の分は未払い賃金部分になります)。また、後日に不足日数分と遅延損害金(年14.6%)を支払えば解雇は有効になるわけです。裁判所の判決で言渡があるまでに必要な支払いを完了すれば、上記の付加金が認容されることも、ほぼありません。
     これはかなり使用者側に有利な解釈となります。

     しかしながら、解雇には、「正当な事由」が必要とされていますので、どんな場合でも、解雇予告さえ支払えば理由なく即時解雇できるというわけではないことに注意が必要です。詳しくは次回に解説致します。

  • 退職の意思表示について

     今回は、始めに、裁判になった実際の事例を示します。

     事例(最高裁判所第3小法廷昭和62年9月18日判決)
     Aさんは、同期入社のBさんと某政党の班会議を組織して、会社に秘密にして活動をしてきたところ、組織からの脱退を考えたBさんが失踪してしまいました。
     会社の人事課担当者が、Bさんの無断欠勤についての事情調査をしたところ、Bさんのお父さんが、失踪前日にAさんがBさんの自宅を訪問したことを話しました。会社は、Aさんに事実を確認しましたが、Aさんは訪問を否定しました。しかし、人事課担当者がBさんのお父さんにAさんの写真を見せたところ、間違いないというので、人事課担当者がBさんの部屋を調べたところ、某政党関係の資料が多数見つかりました。
     そこで、会社は、Aさんに再度の事情聴取をしたところ、AさんはBさん宅訪問の事実を認めて、隠していたことを謝りましたが、某政党との関係は秘匿し、Bさんの失踪原因や行方に心当たりはないと答えました。会社は、Aさんに「B君の失踪事件に関するお詫び」と題して「他に隠し事はありません。Bさんの失踪とは無関係であることを誓います。偽りがあった場合はいかなる処分も甘受します。詫び書きの内容に偽りがあったことがわかった場合は会社の処分を受ける前に、潔く自分から身を引きたい。」という内容の文書を作成させました。
     会社は、その文書を作成させた翌日、Aさんに某政党の資料を示し、Bさんの失踪との関係につき再度追及したところ、Aさんは政党の活動を秘密にしていたことを「偽り」にあたるとされても仕方がないと考えて、その日に人事部長にいったん退職届を提出しました。しかし、Aさんはその次の日、やはり退職はしたくないから、届けを取り消すと人事部長に申し入れました。人事部長はこれを拒絶しました。
     以上が事件の流れです。

     地方裁判所は、退職の意思表示が真意ではなかったので無効であると判断しましたが、高等裁判所は退職の意思としては真意であって有効であるけれども、退職届は人事部長のところまでで止まっており、会社としては退職の承諾まで決定していない段階だったと判断して、退職の撤回を認めました。

     さて、いかがでしょうか。人事部長が退職届を受け取ったら、その時点で会社としても退職を認めたと考えるほうが自然だとは思われませんか。
     
     最高裁判所ではその点が問題とされ、「人事部長に退職届受理の権原がないとか、退職届を受け取る際に単に預かるだけと示したような特別の事情がない限り、通常は人事部長受理の時点で退職が承諾されたと解される」と判断されました。
     このように、退職届の受理という単純な問題であっても、本人の意思を確認し、承諾の有無をはっきりさせておかないと、思わぬ紛争になり、しかも裁判所によって判断が違ってくるという困った問題になることがあるのです。

     いろいろな物事を法的に合意するためには、講学上、「勧誘」「申込」「承諾」の3つのステップがあると言われています。

     勧誘とは、申し込みしませんかと誘うことです。退職でいえば、「退職勧奨」「退職募集」などですね。

     申込とは、契約をしたいという自分の意思を相手に伝えて、相手の承諾を求めることです。退職で言えば、退職への応募とか退職届の提出ということになります。

     承諾とは、相手の意思を確かめて、こちらの希望する契約内容と合致していれば、合意成立を了解するということです。退職でいえば、退職届の受理とか、退職手続の開始ということになります。
     これらのうち、申し込み・承諾の内容が具体的にどうだったのかが明確になっていないと、「言った言わない・決めた決めてない」のやっかいな紛争となって現れてくることになります。

     何事も、きちんと相手の意思を確かめて、当方の意思を明示するということが法律の世界では重要になってきます。