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交通事故賠償額表計算シート バージョンアップV2.3 令和元年賃金センサス対応

交通事故賠償額を計算するための、マクロ使用の表計算シート(Microsoft Excel用) tracalcuです。

変更部分

 * 入通院の日数計算のバグを修正しました。

 * 算定表の一括削除のバグを修正しました。

 * 令和元年賃金センサスを反映しました。

 * 今回からファイルのハッシュ値を表示します(SHA512)
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営業の秘密管理に対する裁判例

 前回に続いて営業秘密の問題についてです。

 今回の事案は、コンサートや各イベントの企画・制作等を業務とする会社での事件です。
 全従業員は4人しかいない小さな会社で、うち2人(元従業員・アルバイト)が退職後、同業種で独立しました。
 原告会社は、その行動に腹を立て、顧客リストや登録アルバイトのリストを不正に持ち出したとして、元従業員らを提訴し、損害賠償と顧客リスト等の使用差し止め、情報消去を請求しました。

 裁判所が認定した管理状況は次のとおりです。
 アルバイト登録リストは、ファイルの背表紙に「社外秘」と記載されて、扉のない書棚においてありました。しかし、従業員に対して秘密保持を求める就業規則はなく、秘密保持の誓約書等も作成されていませんでした。コピーの部数制限やコピー物の回収などの措置もとられていませんでした。
 結果として、この裁判では、秘密として管理されていたとは言えないとして、訴えた側の会社が敗訴しました。

 実は、秘密管理に対する裁判所の判断は、平成15年前後から、比較的厳格なものになってきていると言われています。
 これは、自由経済社会の中では競業が基本的に肯定されるべきだという、規制緩和・自由経済の風潮が強く言われるようになってきた国際・国内の政治経済状況を反映したものとも考えられます。
 裁判所は、世の中のことを見ていないようで、ちゃんと見ているような感じもあります。

 鍵をかけ、コピーの回収もしっかりしていたとしても、情報を管理する立場の人物が情報を流出させることは、究極には防ぎようがありません。
 信頼して会社の情報を取り扱わせていた担当者の裏切りに遭うのは、会社としてもつらいことです。
 小さな会社にあっては、信頼しているからこそ何も書面を交わしていないというのが実情と思われますが、上記の裁判例のように、客観的に秘密管理状況がないというだけで、秘密保護をしないという判断をされてしまう危険がありますので、情報取扱い担当者に対する損害賠償等の実現のためには、秘密保持契約が必須ということになるわけです。

 秘密管理に対する裁判所の見方がより客観性を求める方向にあることを考えると、秘密管理については、文書化が基本であろうと思います。

不正競争防止法で保護される「地域範囲」

 会社法ができるまでは、同一市町村内での同一商号が登記できなかったのですが、会社法施行後、商業登記のルールも変わり、同一所在地の同一商号だけが禁止され、そのほかのケースは登記自体は可能な仕組みになりました。

 しかし、会社法8条では、不正な商号利用を規制しており、不正競争防止法2条1項1号でも同一・類似の商号使用が不正競争の一つされています。そのため、法務局で登記が認められた商号だったとしても、他の同一・類似商号の会社から、会社法や不正競争防止法違反を理由として訴えられる可能性がないとは言えません。

 ちなみに、会社法上の保護では「不正の目的」という主観的要件(故意に準じる)がありますが、不正競争防止法では、不正の目的の有無にかかわらず、客観的に「需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似」の商号を使って「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」をすれば、損害賠償責任を負います。その意味では、会社法違反より、不正競争防止法違反のほうが引っかかりやすいといえます。

 そもそも、「主観的要件」の主張立証は、民事・刑事問わず、裁判で難しい争点の一つです。たとえば、殺人事件で、もし「殺すつもりはなかった」という言い分が通れば、結果的に人が亡くなっていても、「傷害致死」になってしまうようなことです。

 不正競争防止法に基づく損害賠償請求事件では、「広く認識されている」の点について、どのような地理的範囲を意味するのかが争われることがあります。事案としては、老舗のとんかつ屋さんが横浜・川崎を中心に店舗展開していたところ、神奈川県鎌倉と静岡県に同じ店名のとんかつ屋が開業したので、それをやめさせようとして提訴したという案件があります(勝烈庵事件)。

 結論としては、鎌倉の店のほうは表示の使用禁止が認められましたが、静岡の店のほうは、不正競争行為にならないとして、表示の使用禁止は認められませんでした。

 古い法律では、周知範囲を「日本国内」と読めるような規定になっていたので、神奈川県一帯というような狭い範囲でも「周知」といえるのかどうかが議論になりうるのですが、現行法上は、一定の地域範囲に限った周知でもよいが、その保護範囲は、当該周知の範囲内に限られると解釈されています。上記のとんかつ屋さんの件では、静岡県にまでは周知されたといえないという判断がされたことが結果に影響したわけです。

 この「周知性」に関しては、注意を要する点が一つあります。それは、他人Aが長年扱ってきて実績のある商品等XをBが譲り受けた場合にも、B自身がほかの競争者から当該商品等の利益を守るためには、XがA社のものではなく、B社のものであるという点の周知をしていなければ、不正競争防止法上保護されなくなる場合もありうるということです。この点については、営業権譲渡やのれん代などといった話に関連してくるのですが、譲渡対価を見積もる場合には、譲受側での周知に要するコストも考慮する必要があります。