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Day: September 16, 2020

  • 医療契約の相手方と訴訟上での相手方表示の問題

     患者が医療機関を受診すると、患者とその医療機関との間に原則として一定の「契約関係」が成立します。医療契約の法的性質論については、いろいろとあるようで、その説明は私の能力不足で出来ません。  債務不履行構成で請求する場合には、相手方とのなんらかの医療契約関係の存在が請求原因事実となり、裁判実務上、相手方として誰をどのように表示するか、については、一定の決まり事があるので、説明しておきたいと思います。  ちなみに、不法行為構成で請求する場合には、医療契約の存在は請求原因事実でないので、故意過失の主体となる医師個人を単純に被告にすればよいです。当該医師が病院との間で雇用関係や委託関係がある場合で、病院に対しても使用者責任を追求したいとなったときには、相手方表示の問題が出てきますが、それは、患者と病院の医療契約の問題ではなく、当該医師と病院との間の雇用・委託契約の問題です。とはいえ、その病院表示の特定については、以下医療契約の相手方として述べる部分がそのまま参考になります。 考え方 1 契約の相手方は、当該医療機関の「開設者(医療法7条)」であり、医師個人の開設であれば当該個人、法人の開設であれば、当該法人が相手となります。 2 国立病院は独立行政法人国立病院機構が開設者であり、地方公共団体の経営病院は当該地方自治体が開設者です。 3 団体・法人が相手になる場合の訴訟の相手方には、当該団体・法人の代表者を指定します。  独立行政法人国立病院機構理事長、地方公共団体の首長、医療法人等の理事長がそれぞれの代表者です。  ただし、地方公共団体が、地方公営企業法に基づく病院事業管理者を置いている場合には、当該公営病院の代表者は「病院事業管理者」になります。 注意点  病院に・診療所には、「開設者」とは別に「管理者(医療法10条)」がいますが、この「管理者」は必ずしも当該病院の「代表者」ではありません。  また、病院には「院長」と呼ばれる職位の医師がいることが多いですが、その呼び名にかかわらず、当該「院長」が「開設者」でも「管理者」でも、当該医療法人の「理事長」でもなく、直接診療行為をした当該医師個人でもない、のであれば、その「院長」は、当該病院に対して訴訟をするときの相手方には、なりません。  では、ある医療機関の「開設者」「管理者」を知りたいときにはどうしたらいいでしょうか。  そういうときは、「医療情報ネット(厚生労働省のリンク)」  を使います。    検索のシステムは、各都道府県別になっていて、多くの場合は病院名称で簡単に検索できますが、稀に病院名称だけでは検索結果に出てこない場合もあります。そのときは、当該病院の所在地で検索すると出てくることが多いです。基本的には病院の報告がそのまま掲載されているのと、一定のタイムラグは不可避にあるので、必ずしも最新情報ではないという問題点はありますが、それさえ注意すれば、役に立つ情報源です。